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Google Cloud NEXT’25 <Breakout sessionレポート #BRK1-091>
医療現場の業務効率化、スタッフの負担軽減、そして患者体験の向上、
本セッションでは、では、AIエージェントやデータ基盤の活用によって、
これらの課題にどう向き合うかを実例を交えて語られました。
結構広い会場でしたが、満席で立ち見の人がいるくらいでして、この領域は注目度が高いんだな〜と感じました!
セッション概要
- タイトル
- Faster, smarter healthcare: Agentic workflows and modern data platforms
- スピーカー
- Aashima Gupta
- Director, Healthcare Solutions,Google Cloud
- J.R. Allen
- Chief Data Officer, HCA Healthcare
- Michelle O’Connor
- President & CEO, MEDITECH
- Sameer Sethi
- SVP, Chief AI Officer, Hackensack Meridian Health
- Aashima Gupta
- 概要(公式)
- このセッションでは、医療技術の進歩とAIエージェントの実用化における連携の重要性について考察します。技術革新者と医療提供者のパートナーシップが、重要な臨床課題をどのように解決しているかをご紹介します。さらに、強化された検索・要約ツールが、ワークフローの効率化、イノベーションの促進、そして患者ケアの向上にどのように貢献しているかについても学びます。
まとめ
ヘルスケアにおけるAIエージェント活用の最前線:現場とテクノロジーがつながる瞬間
これまでに聞いたStartupにおけるAIのお話やAIエージェントのお話し含めて共通で話されている点は
以下の3点です。
- Agentic AI:単なるチャットボットではなく、複数のエージェントが連携して業務を実行する構造へ
- “人間の負担を軽くする”が本質:看護師の記録作業削減や予約のオーケストレーションなど、実践的なユースケース多数
- 信頼できるデータ基盤が“前提条件”:どれだけAIが進化しても、品質の低いデータでは信頼されない
医療業界の現状と課題

米国だけで年間4.2兆ドル以上が医療に使われているにもかかわらず、
- 5人に1人の患者が満足な医療を受けられていない
- 2029年までに1,000万人規模の医療従事者不足が予想されている
このギャップが医療業界全体に「構造的なひずみ」を生んでいる。
医療業界でもAI導入が進む

医療業界でも生成AI(GenAI)の導入が急速に拡大中
- 75%の大手ヘルスケア企業がGenAIの実験に取り組んでいる
- 95%の主要ヘルスケアの企業がGenAIの利用に期待を寄せている
医療業界は歴史的にデジタル変革が遅れていたが、近年は新しいテクノロジー導入に積極的な医療機関が増加
Agentic AIの可能性:3つの大きな潮流

Google Cloudが医療AIの導入を通じて見えてきた「3つの主な進化トレンド」が紹介されました:
業務効率の飛躍的向上(Supercharging Operational Efficiencies
- 医療機関や保険者のワークフロー最適化を通じて、運用コストの削減と効率向上を実現
- 対象となる領域は:
- 事前承認プロセス
- 保険請求処理
- コールセンター業務
- 患者フロー管理(予約・来院・退院までの動線)
- これにより、管理業務の負担が大幅に軽減され、医療提供体制がより持続可能に
医療従事者の生産性向上(Boosting Healthcare Workforce Productivity)
- 医師や看護師などの医療従事者が、AIの支援によって**「本来の業務=患者ケア」へ集中**できる環境を整備
- 主な手段は:
- 定型業務の自動化
- インテリジェントなインサイト提供
- 診療・記録業務のワークフロー改善
- 結果として、医療の質を落とさずに従業員の疲弊を防ぎ、持続可能な現場づくりが可能に
ケアジャーニーの再構築(Reimagining Care Journeys)
- AIを活用した会話型・パーソナライズド・患者中心のケア体験を設計
- 具体的には:
- アクセスのしやすさ向上(予約・相談)
- 双方向のコミュニケーション強化
- フォローアップまでを含めた継続的な患者参加
- これにより、患者のエンゲージメントが高まり、より人間味のある医療体験が実現
この3本柱を軸に、Google Cloudは「AIによる医療支援=業務効率だけでなく、人間らしいケアの再発明である」という方向性を明確に示していました。
AIエージェント活用の現場実装例と展望
GoogleCloudが考える、医療現場におけるAI活用の話のあと、中盤からパネルディスカッションへと移行しました。

- MeditechのMichelle氏
- EHR(電子カルテ)上でのサマリー自動生成や意思決定支援機能に取り組んでおり、「AIによる業務支援が患者ケアの質を左右するフェーズに入っている」
- KakaoHealthcareのSoo-Yong Shin博士
- 慢性疾患管理・バーチャルケア事業・研究基盤としてのEMRデータ統合に取り組み、Geminiなどを活用し「10%の業務効率向上を実現」
患者体験を支える”裏側のAI”──Hackensackのエージェント連携構想
- Sameer Sethi氏は
- 患者が診察予約をする際の「裏で動く複雑なワークフロー(予約→送迎→院内連携→薬局→リマインド)」をマルチエージェントでオーケストレーションする構想を紹介。
- その中で、「すべてがAIで完結するわけではなく、人間の介在をどう設計に組み込むかが鍵」と語り、医療特有の“責任設計”の重要性も強調されていました。
データガバナンスとAI準備:JR氏の「AIでAIを整える」取り組み
- HCAのJR Allen氏
- Google Cloud上に構築した「Intelligence Net」というデータ基盤の取り組みを紹介。
- 注目すべきは、Geminiを使って5万以上のデータ項目の定義と品質ルールを自動生成している点。「人間の手でやれば1年かかる作業を、2時間で終えた」と報告され、会場の関心を集めました。
- Google Cloud上に構築した「Intelligence Net」というデータ基盤の取り組みを紹介。
「10年後の医療、我々は過小評価しているのか?」
セッション終盤では「10年後の医療は今、我々が考えているよりも進化しているか?」という質問に対し、登壇者全員が「Yes」と回答していました!
- Michelle氏:「AIは小規模病院でも活用できる時代へ。民主化の力がすごい」
- JR氏:「看護師が記録作業に追われない世界が見たい」
- Soo-Yong Shin氏:「患者中心のケアは変わらないが、周辺業務はAIが担うべき」
- Sameer氏:「“AIが必要”ではなく“問題をどう解決するか”という本質的対話に移っている」
最後に
医療におけるAI活用は、「人間らしさ」を守るための挑戦
AIの役割は「人を減らす」ことではなく「人が本当に向き合うべきことに集中できる環境をつくること」だという点。
Agentic AI、マルチエージェント、データレイクハウス、EHR統合……
これらの技術は、医療現場の「人間らしさ」を守るために存在していることです。
最後に、「AIを使いたい」から「何を解決したいか」という会話に変わったことが、今の変革の本質だとまとめられていました。
確かにAIの一つの手段にでしかなく、AIを使うではなく、どこの領域においても何を解決したいかがとても重要だと感じたそんなセッションでした!