MEGAZONEブログ
AWS re:Invent 2024 セッションレポート #SVS301-R|Amazon ECSによるデータ保護とコンプライアンスを実現するアーキテクチャ – レガシーからクラウドネイティブへ:AWSによるFannie Maeの革新的な変革の軌跡
SVS301-R | Architecting for data protection and compliance with Amazon ECS – From Legacy to Cloud-Native: Fannie Mae’s Transformational Journey with AWS
セッション概要
- タイトル
- Architecting for data protection and compliance with Amazon ECS – From Legacy to Cloud-Native: Fannie Mae’s Transformational Journey with AWS
- スピーカー
- Michael Lee, Vice President Finance Technology Fannie Mae
レガシーからクラウドネイティブへ:Fannie MaeがAWSで実現した変革
Fannie Maeは、持続可能で公平な住宅所有を支援する使命のもと、長年にわたる金融サービスを提供してきましたが、レガシーシステムの限界に直面していました。同社は、AWSのサービスを活用し、わずか1年でクラウドネイティブなプラットフォームへと飛躍的な変革を遂げました。このブログでは、Fannie Maeの変革の旅路と、その成功の秘訣をご紹介します。
レガシーシステムの課題
Fannie Maeが直面していた主な課題は以下の通りです。
- 老朽化したインフラ: サポート終了が迫る中、スケーラビリティの欠如や保守の困難さが課題となっていました。
- 過剰なカスタマイズ: 複雑なカスタマイズにより、迅速な変更対応が難しい状況でした。
- 技術の分散: 多種多様なツールやフレームワークの使用が、全体的な非効率を引き起こしていました。
- 専門知識への依存: 特定の専門家に頼らざるを得ず、チーム全体での柔軟な対応が困難でした。
- 開発者体験の悪化: 環境の複雑さにより、開発者が業務を進める上で多くの負担を強いられていました。
- 運用サポートの課題: メンテナンスに膨大なリソースが必要となり、コスト増加と効率低下を招いていました。
これらの課題により、Fannie Maeは全面的なシステム再構築の必要性を強く認識するに至りました。
クラウドネイティブへの飛躍
今回の移行では、わずか40名のチームが1年以内に完全なクラウドネイティブシステムを構築しました。この実現を可能にしたのは、以下のような明確な戦略と実行計画でした。
- Amazon ECSとAWS Fargateの活用
従来の仮想マシンベースのインフラを排除し、ECSとFargateを導入することで、インフラ管理の負担を軽減しました。特に、コンテナの自動スケーリングやリソース利用の最適化が可能となり、コスト削減と効率化を同時に実現しました。 - KPMG Low-Code Platform (KLC) の採用
Low-Codeプラットフォームを利用することで、コード量を削減し、開発スピードを大幅に向上させました。このプラットフォームにより、反復的なタスクを自動化し、より複雑な問題に注力する時間を確保しました。 - イベント駆動アーキテクチャの導入
Amazon SNSやSQS、Lambdaを組み合わせて、リアルタイムのイベント処理を実現しました。これにより、システム全体が柔軟に応答し、ダウンタイムを最小限に抑えながら高いパフォーマンスを維持することが可能となりました。 - データレイヤーの最適化
データベースのパーティショニングを行い、PostgreSQLをベースに並列処理を実現しました。これにより、処理速度が65%向上し、ビジネスデータへのリアルタイムアクセスが可能になりました。 - DevSecOpsの徹底
セキュリティとガバナンスを内包したDevSecOpsのプロセスを導入することで、システムのセキュリティを強化しながら、スムーズなデプロイメントを実現しました。特に、TerraformやGitLabなどのツールを活用して、自動化と効率化を推進しました。
新システムのアーキテクチャ
新システムは、AWSサービスを基盤に設計されています。以下が主要な構成要素です。
- イベント駆動型アーキテクチャ:Amazon SNSやSQSで通知を効率化
- コンテナベースの計算環境:ECSやFargateで、柔軟でスケーラブルなインフラを構築
- データ管理:Amazon S3やPostgreSQLでデータの一貫性を確保
- DevSecOps:TerraformやGitLabなどのツールを活用した継続的デリバリー
ビジネス成果
1. 継続的な会計処理の実現
Fannie Maeは、新しいクラウドネイティブシステムを構築することで、高度にスケーラブルでレスポンシブなシステムを実現しました。このシステムにより、財務取引のリアルタイム処理が可能となり、財務データが常に最新の状態で即座に利用可能となりました。
具体的には、AWS Fargateを利用してサーバーレスなアーキテクチャを採用し、イベントドリブンな処理をLambdaとSQSを活用して設計しました。これにより、取引データの迅速な処理と一貫性が確保されました。
2. 市場投入までの時間短縮
従来のシステムに比べ、開発者の作業負担が軽減され、効率が大幅に向上しました。これにより、要件から検証済みのコードまでの移行が迅速化され、新しい機能やサービスを市場に展開するまでの時間が大幅に短縮されました。
これは、KPMGのLow-Codeプラットフォームを活用することで、開発プロセスの自動化と標準化を推進した結果です。具体的には、コード生成を90%まで自動化し、テンプレート化されたモジュールを使って一貫性のある開発フローを確立しました。
3. データアクセスの改善
新システムは、正確かつアクセスしやすいデータをビジネスチームに迅速に提供することで、意思決定のスピードと精度を向上させました。
この実現には、データストレージにAmazon RDSとS3を組み合わせ、データの分散ストレージと迅速な取得を可能にしたことが大きく寄与しています。また、PostgreSQLのデータパーティショニングを導入し、並列処理を効率化しました。
セッションを終えて
このプロジェクトは、技術的な選定と戦略的な実行がいかにクラウドネイティブ移行を成功に導くかを示した好例です。ECSやFargateの柔軟性、イベント駆動アーキテクチャの実装、Low-Codeの活用など、多くの要素が調和することで、劇的な成果を生み出しました。この事例は、クラウドネイティブを目指す他の企業にも大きな示唆を与えるでしょう。